翻訳漫画の綴じ方|セリフや吹き出し、コマの進み方を考える【翻訳を意識した漫画作り】
卒業アルバム以外の無線綴じなどは引き続き承っております。
日本の漫画は「右綴じ」が基本
まずはこちらのコマをご覧ください。
『セーラームーン』第1巻の第1話目の冒頭1ページ目です。
世界的に有名な作品ですので、物語の解説は省いて本題に入ります。
さて、上の画像は Kindle版ですから綴じの様子をお見せすることはできないのですが、コマは右綴じの単行本と同じで「右から左」に向かって進行します。
当たり前といえば当たり前ですが、これはセリフが縦書きであるという事情から右綴じの仕様になっているのです。
一般的に、日本語で描かれ、日本で出版されている漫画本のほとんどが「右綴じ」です。しかし、それが外国語に翻訳され、外国で出版される際、左綴じになることがあります。
漫画の翻訳 海外版のおかしな違い
それでは、こちらのコマをご覧ください。
『セーラームーン』のフランス語版。左綴じで冒頭の画像とおなじページです。
擬音語(擬声語)の表記などに感心しつつコマを見ていると、おかしなところに気がつきます。
主人公の母親(らしき人物)が「8時を過ぎている」と言っており、制服をきた主人公は「遅刻だ」と言っているのですから、これは登校前の朝8時の描写であると思われます。
しかし、時計は夕方の4時前(15時50分)になっているのです。
もういちど日本語のオリジナル版を確認してみます。
時計は朝の8時10分です。
だから主人公は(泣くほど)慌てているのであり、(学校に)遅刻しそうだと言っているのでしょう。
絵が反転しているために、描き込まれている時刻が人物のセリフや状況と合わなくなっているのです。そういえば、歯ブラシとチューブを持っている主人公の手も逆になっています。
漫画の翻訳事情「綴じ方とセリフ、吹き出し、コマの進み方」
日本の漫画が外国語(とくに欧米圏)に翻訳されるとき、吹出しのセリフを横書きに改める必要があります。
横書きの文字(アルファベットなど)を用いる文化圏では、ほとんどの言語が「左から右」に向かって進行しますので、左綴じが自然な綴じ方向になるのでしょう。
そこで、右綴じを前提にして描かれた漫画を左綴じにするために、紙面を反転させるという強引な方法がとられることがあるようです。
アメコミにしろ、バンド・デシネにしろ、アルファベットを用いる欧米圏では左綴じが基本ですから、右綴じのままでは売りにくいという出版社側の都合が察せられます。
それはそれで構いませんが、本来であればセリフや状況に合わせて反転後のコマを修正する必要があったと思います(時計の針を描き変える程度のことは簡単にできそうです)。
たんに校正をしていないのか、絵に修正を加えないなどの契約上の問題があったのか、そのあたりの事情はわかりません。
しかし、この本は「『セーラームーン』は絵を反転させてもキャラクターの表情にまるで違和感がない」ということを教えてくれます。ですから、時計の針が少々くるっていても、タキシード仮面の髪の分け目が逆になっても作品のたのしさは少しも変わらないのです。
ちなみに、英語版は右綴じになっていました。
こちらは反転による問題は生じませんが、文字を読み進める方向(左→右)と、コマの進行する方向(右→左)が逆になります。
まとめ
以上のことから、外国語に翻訳されることを意識した漫画づくりにあたっては、次の点に注意してください。
右綴じになる場合
コマ割りはそのままでも構いませんが、セリフは横書きになりますので吹き出しの形状を工夫しましょう。
縦長の吹き出しではなく円にちかい形状にしておくと、外国語のセリフもきれいに収まります。
左綴じになる場合
吹き出しの工夫に加えて、コマ割りにも配慮しましょう。
ここで紹介した例のように、思わぬところで齟齬をきたす場合がございますので、反転後は絵がセリフや状況と矛盾していないかのチェックが必要になります。
とくに利き手に関する描写には要注意です。
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