名作小説12作品のノンブル、タイトル、章題の位置を徹底比較
卒業アルバム以外の無線綴じなどは引き続き承っております。
本の入稿データ作成にあたって、ノンブルの位置に迷われている方も多いのではないでしょうか。
「ノンブル」とはページ番号のことで、ページの上部にあったり下部にあったり本によってさまざまです。そこで、名作小説ではノンブルの位置がどうなっているかを確かめ、併せて表題や章題などの位置も確認します。
この記事では本のタイトルを「表題」、章のタイトルを「章題」としています。
また、作品名と本の表題は一致しない場合がありますが、ここでは区別せず用いることにします。
ではさっそく見ていきましょう。
目次
文庫のノンブル位置
新潮文庫『こころ』夏目漱石
新潮文庫では一冊のうちに一作の長編のみで構成され、かつ章題が付いていないものに関しては見開きの両ページに表題が配置されています。
では、同じ新潮文庫でも短編集や章題がある小説はどうでしょうか。
新潮文庫『一千一秒物語』稲垣足穂
ノンブルなどの情報は上部に集約され、右ページに表題、左ページに章題がきています。手に取っている本のタイトル、いま読んでいる作品名、ノンブルがどのページからでも分かるようになっています。
次に岩波文庫を見てみます。
岩波文庫『草迷宮』泉鏡花
新潮文庫ではページの上中央にあった表題が、岩波文庫では左ページだけになり、ノンブルのすぐ隣りに位置しています。短編集も見てみます。
岩波文庫『江戸川乱歩短編集』
短編集では表題がなくなり、かわりに章題が左ページにきています。岩波文庫では左ページに情報が置かれるようです。
この岩波文庫のスタイルを上下逆にしたものが次の講談社文庫です。
講談社文庫『台所のおと』幸田文
ノンブルと表題・章題の位置の組み合わせは、ほとんどの文庫が以上のパターンのいずれかに当てはまります。
といっても、同じ出版社の文庫でも位置が(意見が)定まっていない場合もあり、たとえば講談社文庫ではノンブル・章題が上に位置するものもありました。
本を買うときにノンブルなどの位置は「正直どちらでもよい」のですが、自分でノンブルや表題を配置するとなれば、上にするか下にするかで迷ってしまいます。
ノンブルなどの位置による読みやすさや見栄えの違いは、次の2点のような考え方が一般的です。
- ノンブルなどが上にある方が(手で隠れないため)読みやすい
- ノンブルなどが下にある方が(ページの体裁として)自然に見える
どちらを優先すべきなのでしょうか?
ここで文庫以外の本にも調べる対象をひろげてみれば、また違った傾向が見えてきます。
単行本のノンブル位置
岩波書店『くまのプーさん/プー横丁にたった家』A・A・ミルン/石井桃子 訳
単行本ではページの余白が広いぶん自由度が高く、ノンブルまわりの組み合わせも多くなります。
「上か下のどちらか」ではなく、「上も下も」ぜいたくに使えるのが単行本の利点と言えるでしょう。
河出書房新社『神曲』ダンテ/平川祐弘 訳
行番号が付されているような作品は、上部にノンブルがあった方が(個人的には)見やすいのですが、この本では行番号が漢数字なので混乱することはありません。
このように、ちょっと見ただけでこれだけの違いがあるということは、ノンブルの位置に正解はないようです。シリーズによってルールがあったりなかったりで、それほど気にする必要もないのかもしれません。
ここで、すこし変わったタイプを紹介します。
変わったタイプのノンブル位置
河出文庫『文章教室』金井美恵子
ノンブルと表題がともに上部中央の両ページにあり、小口側がノンブル、ノド側が表題です。右ページと左ページでノンブルと表題の右・左関係が変わります。
作品社『ブヴァールとペキュシェ』フローベール/菅谷憲興 訳
左ページ上部に配した表題が縦書きです。
また、脚注のあるところ、ないところで行の字数が異なっているのもめずらしいタイプと言えるのではないでしょうか。
日本語で書かれた(翻訳を含む)小説は縦書きが基本ですから、ページに配置するような表題も縦書きにしてもいいのです。そして、この縦書きの方針をおしすすめると次のようになります。
岩波書店『露伴小説 第一巻』幸田露伴
表題だけでなくノンブルまで縦書きになっています。
縦書きにすることによりノンブルの小口側への配置が可能になり、本文の天地余白に情報がなくなりました。こういうシンプルなページ構成は、余白へ書きこみをするときにノンブルが邪魔をしないという利点があるのです。
このノンブルの入れ方については【Word】ページ番号を漢数字、縦書きで小口側に配置する方法で解説しています。
そして余計な情報をさっぱり削ぎ落としたものが次の本です。
筑摩書房『石川淳全集 第二巻』
ノンブル以外なにもありません。
この巻は20もの作品を収録した構成なのですが、読者はいま何を読んでいるのか、さっき読んでいたものが何という小説だったかを思い出せないまま、ページをめくり続けることになるのです。
ここまでくると、もはやノンブルも要らないんじゃないかと思えてきます。実際、次の本では実用上ノンブルは不要といってもいいでしょう。
集英社『世界の文学 第29巻』フリオ・コルターサル/土岐恒二 訳
この『石蹴り遊び』という小説は、各章末につぎに読むべき章番号が指示してあります。
つまり、著者によって読む順番があらかじめ指定された小説であり、読者は章番号をさがすためにページを何度も行き来することになるのですが、そのときノンブルはまったく役に立たないのです(乱丁や落丁がないか確認することはできます)。
まとめ
ノンブルの位置は(もし入れるなら)どこでもよいというのが結論になりますが、表題や章題をともに併記するときは、判型によって次のような傾向があるようです。
文庫本サイズ | ノンブルと表題(または章題)を上部か下部いずれかに統一 |
---|---|
単行本サイズ | ノンブルと表題(または章題)を上下で振り分け |
以上、ノンブルを入れる位置について迷われている方も、迷ったことがない方も参考にしていただければと思います。
ノンブル、ページ番号では、ノンブルについてWordでの付け方などを解説しています。
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